訃報と人物像
「内向の世代」を代表する作家の黒井千次さんが、12日に肺炎のため94歳で亡くなりました。本名は長部舜二郎さん。東京都出身で、東京大学経済学部を卒業後、富士重工業に勤務しながら執筆活動をスタートさせました。1969年に発表した短編集『時間』で芸術選奨新人賞を受賞し注目を集め、高度経済成長期におけるサラリーマンの生きがいや、組織と個人の葛藤を追求する独自の文学スタイルを確立。私的な感性から時代を捉え、人間の内面を深く見つめる作風を築き上げました。

「内向の世代」を代表する作家の黒井千次さんが、12日に肺炎のため94歳で亡くなりました。本名は長部舜二郎さん。東京都出身で、東京大学経済学部を卒業後、富士重工業に勤務しながら執筆活動をスタートさせました。1969年に発表した短編集『時間』で芸術選奨新人賞を受賞し注目を集め、高度経済成長期におけるサラリーマンの生きがいや、組織と個人の葛藤を追求する独自の文学スタイルを確立。私的な感性から時代を捉え、人間の内面を深く見つめる作風を築き上げました。
黒井さんは、人間の内面や労働の意味、そして晩年には「老い」の形を鋭く描き出し、数々の文学賞を受賞しました。『群棲』で谷崎潤一郎賞、『カーテンコール』で読売文学賞、『羽根と翼』で毎日芸術賞、『一日 夢の柵』で野間文芸賞に輝くなど、その功績は多岐にわたります。また、芥川賞の選考委員や日本芸術院会員、文化功労者も務め、文壇の要として長く活躍されました。エッセー『働くということ』は、若者向けのロングセラーとしても広く親しまれています。
作家の黒井千次さんは、激動の時代の中で個人の内面や労働のあり方を問い続け、多くの読者に深い洞察を与えました。組織に属しながらも、そこに潜む不安や孤独を鋭く描き出したその作風は、まさに「内向の世代」の象徴と言えます。文化功労者として文壇を牽引し、日本芸術院会員などの要職を歴任したその足跡は、多くの文学作品と共に、これからも豊かな教訓として語り継がれていくことでしょう。